奈良県 壺坂寺 千手観音菩薩
現在の日本で最も欠けているのは布施の精神。布施というと、金銭とか物質的なことばかり言われるが、大事なのは精神的な布施である。つまりお金がない人でもできる布施がある。
いまの日本の社会で、或いは家庭で一番欠けているのが「無財の七施」。中でもことばの施し「言施(ごんせ)」(愛語施)といのがあるが、朝起きて「おはよう」、出かけるとき「行ってきます」、何かしてもらったとき「ありがとう」「ご苦労さま」ということばの施しが欠けている。
たとえば新聞配達、郵便屋さんと顔を合わせたら、「ごくろうさま」と言っているだろうか?、この一言が相手にとってどれだけ生きがいになってくるか、この一言がすばらしい施しになっている。
夫婦、親子、兄弟姉妹、師弟、知人友人などなど、様々な人間関係が交錯して忙しい世の中であるが、人を思いやるこころを言葉にして実践したいと思う。
家裁の家事調停の仕事をしていてつくづく思う。この「無財の七施」を実践していたら、夫婦の関係も随分違ってくると思えてならない。会話がなく、言葉の暴力が蔓延していては、夫婦関係が破綻するのは至極当然の成り行きである。
◎無財の七施
1.眼施(がんせ):優しいまなざしで接すること
2.和顔施(わげんせ):なごやかで穏やかな顔つきで接すること
3.愛語施(あいごせ):あたたかい言葉を与えること
4.身施(しんせ):自分の身体で奉仕をすること
5.心施(しんせ):他の痛みや苦しみを自らのものとして感じ取れる心持ち
6.牀座施(しょうざせ):電車の中で喜んで席を譲る行為
7.房舎施(ぼうしゃせ):雨風をしのぐ所を与えること